最先端・次世代研究開発支援プログラム「グローバルマルチスケールモデルによる無機-有機-地圏環境の強連成評価」

地圏環境リスク・対策評価

人間活動に由来する様々な汚染源が、環境に対してどのようなインパクトを与え、またどのような対策手法で制御、緩和、浄化すべきかを評価・予測することは、豊かな文明社会を持続するためにも極めて重要なことです。

この問題に対処するため、グローバルマルチスケール統合解析システムに基づいて、セメントやセメント改良土の固化安定性評価(図1)、重金属固定・溶出(図2)、バイオレメディエーション(図3)による浄化対策効果の評価と制御を行います。さらに数値解析による評価結果をベースに、地圏環境を保全する新しい制御方法や設計体系の提案といった工学的手法の提案を行いたいと考えています。


図1:セメント改良土の固化安定性に基づく重金属(クロム)の不溶化処理


図2:重金属(クロム)の固定・溶出機構


図3:バイオメデレーション—微生物・植物による有害汚染物質の分解・分離

次に、本研究の成果をどのような方面に応用することができるのかを、ブラウンフィールド問題への取り組 みという具体例を挙げて紹介します。

現在我が国においては土壌汚染対策法の規則によって、土壌が有害物質により汚染されている場合には浄化することが義務付けられています。しかし、思った以上に費用がかさむことなどから、現実には汚染調査や対策が進んでいないという問題に直面しています。環境省の調査によると、土壌汚染が存在する土地は全国で約11.3万ヘクタール、その土地資産規模は43.1兆円(2007年時点)に上ると試算されています。さらに、東京都内の閉鎖工場跡地の浄化費用が地価の3倍以上にも達した事例にも代表されるように、土壌汚染の処理費用がその土地資産価値を上回る、いわゆる「ブラウンフィールド 」は、日本全国で30万~45万ヵ所(面積2.8万ヘクタール)、またその土地資産規模の総額は10.8兆円(2007年時点)に上ると試算されています。本研究成果を応用することによって、このようなブラウンフィールドに代表される土壌汚染(重金属や揮発性有機化合物、また石油系の汚染)に対して、環境影響評価と対策技術の効果を客観的に評価することができると期待されます。さらに、不十分な廃棄物処理、施肥・農薬に起因する土壌汚染や工場跡地などの環境影響評価と浄化対策の実現をサポートします。そして、リスクとコストを天秤にかけた上で、環境汚染により休眠中の土地を再生することによって、大きな社会的・経済的価値の創出に貢献することを目指します。