Strategy

コンクリート研究室の活動の基本は,コンクリートという社会的材料を通じて社会基盤工学に貢献することです .1900年以降,現代に至る世界の都市や地域,社会基盤を形作っている主要材料と構造要素が ,コンクリートおよび鉄筋コンクリートです.

これまで,物質・材料科学の視点に立った研究,コンクリート構造物の施工技術に関わる開発研究 ,そしてコンクリート構造の挙動予測(安全性や耐震性確保)に関する研究が,戦後世界において進められてきました .これらに関する知見や技術,経験は極めて膨大です.この半世紀 ,それぞれの専門分野-物質・構造・施工-で技術が磨かれてきました.

今日,社会基盤施設の寿命推定や維持管理の戦略策定,性能設計・地震防災,環境負荷低減を実現する社会基盤整備が急務な課題となっています .この要求に応え,世界標準となりつつある性能設計を名実ともに次世代社会基盤設計システムとして実用化するには ,物質・構造・環境・外力に関する法則や経験,技術を一体としたシステムに取りまとめて構造化を図ることが ,研究において,また実用化において必須のものとなっています.当研究室の現在の主たる研究課題は ,これを実現するためのRC構造のマルチスケール統合解析システムの構築です.

この研究方針は,物質・構造の分け隔てなく,統合したコンクリート工学体系を構築しようとするものです .その応用は,ライフサイクルマネージメント&アセスメント,任意環境下の構造物の安全性 ,耐久性,耐震性能の照査システム,循環型社会の一部を形成する都市・地域でのリサイクルと環境負荷などに適用されます .現在は,このシステムをさらに拡張し,地盤材料や構造内の空隙構造と熱力学的状態量の予測,構造-地盤系の物質移動,固定,拡散問題にも適用範囲を拡げつつあります.

コンクリート工学の体系化を目指すこの研究に求められる素養は様々です.応用力学,熱力学,固体科学 ,環境学,破壊力学,化学反応プロセス,伝熱工学,流体力学は,これらハード技術のベースを形成します .一方で,社会学,管理工学,経済学,人間科学の素養は,社会に社会基盤を実現することを究極の目的とするコンクリート工学に大きな貢献をします .開発されたハード技術とシステムも,これを経済社会活動の中でうまく活用してこそ,意味を持つからです .また,情報技術,計算機科学に長けた能力は ,既に俯瞰の困難な巨大システムを「見て」そして「直感して」工学に応用するために大いに期待されます.