少人数セミナー 3D Concrete Printing

「太海駅に設置される3Dコンクリートプリンティング(3DCP)製ベンチのデザイン」を課題として、少人数セミナーと工学部建築学科の4年生向け講義「設計製図第七」を合同開講しました。この産学連携スタジオ型講義が、国内初の建設用3DCPによる実施デザインコンペとなりました。成果物である2基のベンチは、JR東日本太海駅にて実際に座ることができます。


講義の概要
本コンペは、土木学会の「3Dプリンティング技術の土木構造物への適用に関する研究小委員会(委員長:石田教授)」に委員として参加している、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)、および3DCP事業者4社(會澤高圧コンクリート株式会社、株式会社Polyuse、クラボウ(倉敷紡績株式会社)、日揮グローバル株式会社)との産学連携により実現しました。
講義の初回に、建替えによりリニューアルされる内房線(JR東日本千葉支社管内)太海駅に新たに設置するベンチが設計対象であること、無人駅であるためメンテナンスフリーが容易であること、海の近くであるために塩害に対する高い耐久性が求められること、利用者の衣服が破けないような表面仕上げであることなどの設計要件が発注者から説明されました。その後、3DCP事業者から各社の技術紹介がなされ、デザインするにあたっての注意点などが解説されました。翌週からは実際の3Dプリンタの見学、実験、さまざまな分野の専門家によるレクチャーと各学生のデザイン案へのアドバイスという形で授業は進みました。


2022年5月に行われた一次選考段階では14のデザイン原案が学生から提案され、3DCP事業者4社がその中から3案を選びました。その後、4社も加わった学生との協働3チームが技術的検討を加え、7月に行われた二次選考段階で出された最終案の中から、「後ろ髪を引かれるベンチ」がJR東日本千葉支社によって最優秀案に選定されました。9月に製造と性能試験が行われ、10月には太海駅に搬入設置されました。駅舎の工事はその後も続き、12月14日の新駅舎への切り替えに伴い、ベンチも供用開始されました。


このような3DCPに関する実施コンペは世界でも初めてだと思われます。学生にとっては、デザイン案を考えることに留まらず、事業者との技術的検討、発注者への技術提案、契約・性能試験・施工・検査などの経験を通し、より実践的な教育を受けることができました。企業と学生が協働する産学連携のスタジオ型講義は、これまでにない教育の在り方を提示するとともに、3DCPの普及展開を促し、建設分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に大きく貢献すると考えられます。


最終プレゼン

JR東日本千葉支社への最終プレゼンの様子を動画で公開しています。