種別(Category) 修士論文  
Master thesis
タイトル(Title) セメント系材料−ベントナイト連成系を対象とした熱力学モデルの構築と人工バリアの性能評価
Performance Assessment of Engineered Barrier Based on Thermodynamic Model of Coupled Cementitious Material and Bentonite
著者(Author) 臼井達哉(日本)
USUI Tatsuya(Japan)
主査(Supervisor) 石田哲也助教授
A. Prof. ISHIDA Tetsuya
キーワード(Keyword)  
 
掲載誌(Events Venue) 東京大学修士論文
Master thesis of the Univ. of Tokyo
発表年・月(Published Year, Month) 2006.3
論文入手先(Name of Publication) 東京大学図書館
Library of the Univ. of Tokyo
要旨(Abstract) 古くから知られるコンクリート構造物の劣化事象として,セメント硬化体の炭酸化,アルカリ骨材反応,および化学的侵食等がある.これらの反応進行速度は比較的早く,数十年といった供用期間中に顕在化する劣化現象であることから,工学上の要請による研究の進展が見られて久しい.一方,本研究の対象であるセメント硬化体からのカルシウムイオン溶脱は,現象論的には材料の強度ならびに耐久性低下を引き起こすが,劣化速度が極めて遅いため,これまで実工学での問題となることは少なかった. 現在,放射性廃棄物最終処分において,人工・天然バリアによる多重バリアを使用した処分方法の検討が行われている.放射性廃棄物には半減期の長い物質が含まれるために,数千年から数万年オーダーという長期間にわたる安定性が要求される.この中で,人工バリア材としてセメント系材料及び緩衝材の使用が検討されている.放射性廃棄物処分場といった1000年を超える長期間にわたって性能担保が必要な場合,水酸化カルシウムやC-S-H水和物の溶出による多孔化は,材料・配合・構造設計において照査すべき重要な項目となる.また,セメント系材料と天然バリア材(周辺岩盤など)との緩衝材としては,低透水性,膨潤性,および核種吸着性が要求されており,このような条件を満足し得る材料として,天然に産するベントナイトが注目されている.その中でも膨潤性に富むナトリウム型ベントナイトが,有力な候補として挙がっている.ベントナイトでは,ベントナイト中の交換性ナトリウムイオンがカルシウムイオンに交換されること(ベントナイトのカルシウム化)さらに,ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトが負の電荷を帯びていることから,カルシウムイオンを吸着することが予想される. 以上から,本研究ではベントナイト−コンクリートといった異なる特性を有する材料のカルシウムイオン溶出・吸着,平衡現象についてモデルを構築した.二次鉱物の生成等,考慮するに至っていない相互作用もあるが,ベントナイトとセメント系材料が接することによるカルシウム移動現象への影響を予測する解析システムを提案するものである. 現在,著者の所属する東京大学コンクリート研究室では,熱力学連成システム(DuCOM)の開発が10年来進められている.セメントの水和反応−水分移動−空隙構造を連成することで無機複合材料の硬化過程を追跡し,さらにイオン移動・平衡現象を熱力学理論に基づき定式化することで,セメント硬化体からのカルシウム溶脱現象を追跡する枠組みである.同時に,多孔体の幾何構造を規定する空隙モデルを,セメント硬化体のみならず地盤材料一般を取り扱えるよう拡張を試みている.本研究では,ベントナイトについて空隙構造のモデル化およびそれに伴う水分移動モデル,イオン移動モデルの構築を試みた.十分に密な状態のベントナイトでは,主成分である板状結晶構造であるモンモリロナイトが膨潤し粗大空隙が充填される.そのため,ベントナイト中の物質移動に関与する空隙として,層間空隙のみ考慮することとした.ここでは,ベントナイトの膨潤モデルから,ベントナイトの層間距離および空隙率を求め,これらのパラメータに基づくベントナイトの透水係数算定手法ならびにイオン移動モデルを構築した.水分移動モデルでは,ベントナイトの空隙構造を考慮したモデル化を行い,透水係数として算定される値は,前田,三原らによる既往の研究3),13)のものと概ね整合した.イオン移動モデルでは,ベントナイトの空隙構造のみならず,ベントナイトの電荷の影響を考慮することにより,陽イオン・陰イオンともに実効拡散係数を再現することができた.続いて,セメント系材料からの溶脱に関する最新の知見17)をもとに,既存モデルのイオン移動に関するパラメータについて修正を行った.微細空隙構造の寸法変化ならびにイオンと空隙壁面の相互作用による拡散低減を表現するパラメータとして,収斂度が定義されている.現在までに,セメント系材料および地盤材料を包含する収斂度の関数が与えられているが,本モデルの詳細な検証はこれまでに行われていなかった.本研究では,セメント系材料からの溶脱に関する芳賀らの実験結果17)との比較・検証から,収斂度の修正を行った.これにより,種々の水セメント比おけるカルシウム溶脱についての解析精度が向上した. 本研究で構築したベントナイト−セメント系材料モデルの比較検討により,以下の項目に関する知見を得た.柴田らの実験結果16)から,ベントナイトおよびセメント系材料の個々のモデルの検証が行うとともに,異種材料の相互作用について適切に表現されていることが概ね確認された.さらに,人工バリア(セメント系材料・ベントナイト)の性能評価を行い,ベントナイトの固定化能力により,コンクリートの劣化進行速度が上昇し,人工バリアとしての性能劣化が促進される可能性があることが明らかになった.人工バリアの性能評価を行う際には,ベントナイトとセメント系材料の両者を全体システムとして捉えた一体解析が不可欠であることを示した.