種別(Category) 卒業論文  
Graduation thesis
タイトル(Title) 熱力学連成解析による漏水履歴の推定と地下構造物の塩害進行予測
 
著者(Author) 香川沙絵(日本)
KAGAWA Sae(Japan)
主査(Supervisor) 石田哲也助教授
A. Prof. ISHIDA Tetsuya
キーワード(Keyword)  
 
掲載誌(Events Venue) 東京大学卒業論文
Graduation thesis of the Univ. of Tokyo
発表年・月(Published Year, Month) 2007.3
論文入手先(Name of Publication) 東京大学図書館
Library of the Univ. of Tokyo
要旨(Abstract) 日本の社会基盤施設は、ストックの増大や財源の減少に伴い、維持管理が重視される時代に入りつつある。コンクリート構造物に対しても、設計から供用期間全般にわたる事象の体系化と、種々の性能を任意の時点で直接かつ定量的に評価することが求められている。また、塩害や中性化といった環境作用の影響による劣化も顕在化している。そのため、様々な自然環境条件に対して、コンクリート構造物の劣化・変性状態を精度よく評価する技術の実現が強く求められている。 以上の背景を踏まえ、東京大学コンクリート研究室では、任意の材料・構造形式に対して、想定された環境・気象作用を受ける構造物の状態・性能を時空間軸上で的確に予見する熱力学連成解析システム(DuCOM)の開発を行っている。本システムでは、若材齢コンクリートの固体形成過程の追跡と、その後の長期間にわたって進行する劣化現象を任意の段階で予測する手法を構築するまでに至っている。 本研究では、この熱力学連成解析システムを用い、既存の地下コンクリートトンネルにおける塩害進行予測を目指した。本システムを実構造物へ適用して将来予測をするためには、入力情報として材料の品質や環境条件が必要となる。しかし既存構造物の場合、周辺環境について過去の情報を得ることは難しく、何らかの手段で妥当な条件を仮定しなければならない。本研究では、構造物内の現在の塩化物イオン分布を手がかりとして、過去の環境条件の推定を試みた。 地下トンネルにおける塩化物イオンの供給源は、断続的に壁面を流れる漏水のみであり、その発生頻度は場所によって大きく異なると推測される。そこで、塩害の進行に影響を及ぼす因子のうち、場所ごとの違いが特に顕著なのは漏水であると予想し、過去の漏水パターンがコンクリート内部の塩化物分布に与える影響を検討した。まず、漏水の状況について種々の条件を仮定し、熱力学連成解析システムによるシミュレーションを行った結果、塩化物の浸透深さは漏水の発生した時期によりほぼ決定され、その時期における漏水の発生パターンの影響は小さいという結論を得た。このことから、浸透深さに着目することによって、現在の塩化物分布を良好に再現する漏水履歴の推定に成功した。さらに同じ手法を用いて、各場所の様々に異なる塩化物分布についても、効率よく漏水履歴を推定できることを示した。 また、漏水以外の因子を変化させてシミュレーションを行った結果、場所ごとの水セメント比の違いが、塩化物分布に対して大きな影響を与えることがわかった。この影響を考慮し、推定された材料条件・過去の環境条件、さらに将来予想される環境条件を入力情報として熱力学連成解析システムに与えることで、塩害の進行予測が可能であり、この予測が合理的なメンテナンス計画の大きな手がかりとなりうることを最後に示した。