第六回議事録 (1月10日,17日)

ローマ人の物語第X巻 

○公と私
 インフラは公がすべき。近年の日本は「公の意識」の観点が薄いケースが多い。(石田先生談)

○ 小アジアが、2000年前と今を比較すると、街や道が減っている。なぜ?(三橋)
 ― メンテナンスしないと壊れる。
なぜメンテナンスしない?
 ― 他の街との関係性が薄くなって利用しなくなったから
 ― 公の力が弱く、インフラの整備ができなかった(インフラの整備は公の強さに依存)

メンテナンス大事
 例 1970年代くらい、アメリカで緊縮財政をしなければならなかったのでメンテナンスコストをけちった。その10年後、インターステイトハイウェイ(州をネットワークで結ぶハイウェイ)に穴が開いたり、舗装がぼろぼろになったり、落橋がおこった。
→ インフラはメンテナンスをしっかりしないと、すぐだめになってしまう。
その点、北欧はハード、ソフトともにインフラがすごい(ex医療制度の充実、橋がきれい)

○土木工事をするのが軍団兵であったのは効率がよい。軍団兵が手持ち無沙汰にならない。(山崎)

○ローマの土木技術がすごい。特に水道をひくときの勾配の計算とか。(千々和)
・技術の発端は職人から。職人の技術や勘を万人が持ちいれるようにしたのが、学者。
・日本では、昔ながらの技術が受け継がれている→よいこと。(ex宮大工)
ex 伊勢神宮
 伊勢神宮では20年ごとに、建物や中の装飾品まで、20年ごとに壊しては作り直している。
 本来は宗教上の理由だったが、その決まりごとは、技術の伝承という点で優れた貢献をしている。
 若手が、先輩と同程度のものに、+αの何かORIGINALを出す。それが1000年間繰り返されてきた。
→ストックされた知識を応用させてさらによいものを作る力が日本にはある(ex SONYのトランジスタ)


○ なぜ第2東名を作るのか?その意義は?
・ インフラは単体で採算の取れるものではなく、冗長度も低くなる。現状では、強い第1東名と弱い国道1号があるのみ。第2東名はrisk hedgeとしてその意味を持つ。
インフラはネットワークでなければならない(ex.ローマ街道)
・ ただし、そうした意義についての議論が希薄。道路公団という組織の腐敗は問題だが、それが道路まで不要という論議に発展するのはおかしい。

○アッピウス・クラウディウスはすごいVISIONが見えている人(カエサル級)真の政治家。ローマの方向性を示したすごい人。(松尾)
→それに比べ、日本の政治家には公共心がない!!

○ローマの人たちは、本当に自分たちの国が大好きだったんだなぁ、と思った。
ヨーロッパで、「日本には歴史があり、日本人は親切で礼儀ただしいし、日本はいい国だ」といわれた。日本人は、理由も無く、日本はダメだという。もっとよいところがある。
閉じた社会は相対して比べることができない。外に出てみないと自分の国を正しく見ることはできない。(福島)
・ ローマは外に開かれており、様々な人・物が流れ込んできた。
・ 道路がたくさん通っていることで、ローマの政治のやり方にも影響したのではないか?


○日本人の自分の国の認識にはマスコミが関与しているのでは。つまり、マスコミは日本の悪いところにばかり報道するため、日本は悪いというイメージを国民が持ってしまった。
・ メディアでは、善悪の2分論でしか議論していない。イメージでよい悪いを判断する。
・ 人間は、自分のイメージに合わないものを提示されると拒絶したくなる。
→TVが世論のイメージと違うことをやると、視聴率が下がる。
・ イメージとあっていると、そのイメージがあたかも真実であるかのように認識してしまう。 
・ 『俺はマスコミが大嫌いだ』(by千々和)…マスコミは一面的にしか取り上げない。また、広告を出さない建設業界はたたきやすいからたたく。ワルモノを作れば『売れる』から。公共事業削減論のみが先行しているが、必要なものもあるということは言わない。離島に橋をかけるのと都心の渋滞緩和では次元の違う話だが、ひとくくりで扱う。
・ 愚民とマスコミ⇒鶏と卵?
国民側に税金を取られているという意識が足りなすぎ。無関心
政治と市民の間に入ったマスコミが一方通行の情報を垂れ流す→双方向通信の重要性
報道、議論における誤謬の蔓延
市民が鵜呑みにしてしまう。マスコミも批判を受けないから改善の余地なし。
→Internetの活用。ソフトなインフラの整備


○ 一般常識と理系分野における常識の乖離
・ 理系分野のことを人に伝えるのは難しい。“G”といえば、理系学生にとっては重力だが一般にはそう思わない。(『さすがにジャイアンツとは思わないよな』by石田先生)
・ 科学の面白さを伝えることが重要。ノーベル賞の田中さんは絶好の位置にいる。もっとアピールすべき。
・ 翻って土木工学の分野を見回したとき、われわれはインフラの重要さを伝えられていないのではないだろうか?

(文責:中村 公紀)

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