第五回議事録 (12月13日,24日)
ローマ人の物語第V巻
○ 今回の名言
「来た、見た、勝った」
○ 少ない自軍でのカエサルの戦い
カエサル側は大軍でない場合がほとんど。
機動力確保・意思統一を可能にするため、また、敵地での食糧確保に有利であるため、欠員が出ても補充しない。
ガリアでの戦役ではやむをえなかったが、後にはその形式が彼のスタイルになっている。
兵は量より質を重視、そして、戦いの準備の周到さが、カエサルの勝因。
「少ない自軍」といっても、どれだけ削るかはリーダーの技量。 cf) 橋の安全率
素人にはできますまい。
・ ファルサルスの会戦
ポンペイウス側は圧倒的に大軍。地勢も、カエサルに有利でない。
兵士に「勝てる」と思い込ませる演説の巧みさ、更に、実際に勝たせた戦術。
「見事としか言いようがない」(by石田先生)
しかしながら、危ない橋ではあったろう・・・
○ ポンペイウスという人
一言で言えば、優柔不断。虚栄家(他人によく思われたい人)だから、元老院派たちの言いたい放題にNoと言えない。彼には野心(すべきと思うこと)がなく、トップに立った後の、ヴィジョンというものに欠ける。「首尾一貫は大事」(by石田先生)
若くしてピークを迎えた彼は、年を取るごとにやる気まで失っているようである。
周りの人々は若い頃の彼の栄光を知っているから支持。(かつがれただけ?) しかし、彼自身はワンマン主義で、自分のペースでやりたい性分。しかも新しい戦術に手が伸びない。
・ 何故、負けたか
[カエサルにも敗北がなかったわけではない。彼の場合、負けたときもボロ負けをしない。その後必ず挽回する、というだけのこと。]
ポンペイウスは、負けた経験がない。ファルサルスでの一件においては、その敗北をスピーディーに挽回する術を知らず、周囲の国々を敵にまわしてしまった。
○ アントニウスとオクタヴィアヌスという人
アントニウス: カエサルの下で働いていたが、政治家としての実力なし。
オクタヴィアヌス: 体力面は乏しくとも、強い忍耐力をもつ。また、カエサルのやろうとしたことを完全に理解する能力もあった。
・ オクタヴィアヌスの成功の秘訣
「元老院派」に対してあからさまには反抗しないが、うまく味方を増やしていくことで、いつの間にかカエサルの目指した方向(帝政)へ運んでいった。カエサルは一人で何でもやってしまうタイプであったが、オクタヴィアヌスは右腕・アグリッパを始めとして人を使うのがうまい。
○ 暗殺者たちのヴィジョン
実行前・・・カエサルを殺せば、古き良きローマ(共和政)に戻ると思った。
カエサルが遠征に行ってしまったら取り返しがつかないので、時間がないから焦って、パニック状態。
みんなが望んでいると思ったが、早とちり!
← 共和制を守りたい人(政治的理由) + カエサルに対して嫌悪感をもつ人(感情的理由)
が混ざっている。
○ カエサルのヴィジョン
・ 土木工事 → カエサルの時代には実現しなかったが後の時代に実現したものが多数あることからみても、カエサルのセンスを覗える。
・ コスモポリス → 防衛線はあっても、国境はなし。[元老院派には受け入れられない思想]
・ 市民集会を「追認の機関」に + 自分は終身独裁官に → 階級闘争の排除
・ 帝政 (ただしチェック機構が効かなくなった場合,失敗したら悲惨)
・ 後継者 → 当時、青二才だったオクタヴィアヌスの能力を見抜くカエサルの眼。
○ 現在の日本って
どこでもそうだが、安定成長期には保守的になりがち。
身体の成長に内臓が追いついていない(機能不全に陥っている)この時期までのローマは、まさに現在の日本と似ているのではないか。
大事なインフラも政治家の利己の道具、支持を得るための政策(←選挙の弊害)、
優れた人材が活躍できない体制(←革新派は「スキャンダル」により政治“生命”を絶たれる。ローマ時代でいえば、暗殺により生命を絶たれるように)、など。
忘れられた「公と私」! インフラは絶対に「公」であるべき。「私」にして利益誘導など、許されない。
政治家は、トップに立つまでの間に、初志とは違う色に染まってしまうのであろうか・・・。
(文責:山崎 満)