第四回議事録 (11月8日,15日)
ローマ人の物語第IV巻
《カエサルのやろうとしたことを明確にする》
カエサルの凄いところ [本質の理解と、それから生まれるビジョンに基づいた行動]
新しい物を一から創造するのでなく、すでにあるものを保持しながら改革。それが後世にまで受け継がれてゆく。
遠い先まで見越して行動する。決してひとつの目的では行動しない。
非常に強い責任感。自分がやらなければならないという意識。
40歳まではぱっとしないが、トップに立つなりどうしてあんな活躍ができたのか?
(⇔対照的にスキピオは若いころから大活躍)
そもそもいつから偉くいなったのか記述がはっきりしない。客観的でない。
軍事を人使いと戦術との要素からなるものとして見た場合、カエサルは戦術は本から、人使いは経験から習得した。
本で読んだことを現実と結びつける想像力の豊かさ。表面だけでなく本質まで知っていたので、機に応じた戦略で敵を撃破した。
(⇔今の官僚は本質を知らず表面の規則を遵守するだけ。しかしそもそも全員が理解するのは無理な話。少なくとも上に立つ者だけは本質をしっかり理解しておく必要がある。)
カエサルは生涯失敗をしていないか?
失敗はするが2度とはしない。ここからベストを探し、一気に挽回する。
一見失敗したようでも先をみて行動した結果なのか、後になって有利になる。
失敗と見かけの失敗の差はその人が本質を理解しているか否かによる。
(⇒本質を理解したつもりでも実はそうでないことが多い。でもここでの理解から生じる様々なつながりがその人の世界を広げるきっかけになる。)
情報発信のうまさ
→ 巧みに情報を発信し、自分をうまくプロデュース
→ 情報発信することで自分の属する民衆派の心をキープし続ける。
→ 発言が首尾一貫している。(⇔森首相)
「賽は投げられた」
→ 内戦の開始に伴い、親兄弟さえも敵味方となって戦わねばならなくなる。
→ 博打(さいころの目を当てる、カエサルの軍団内でも行われていた)では、サイコロを投げた時点から勝負が始まる。
なぜ共和制を変えようと思ったのか?
そもそもの家柄、身分は問題なし。ただし家は裕福ではなかったが。
似た例が新撰組。旧体制の中央からは革新派が生まれ、中央周辺から強い保守派が生まれる。
争いの絶えない今の共和制を変え、究極的には民衆と貴族を融合させ(伝統的ローマの手法)、その上に立つもの=皇帝で統治することを考えた。
このときローマの国土の拡大に伴い、市民集会に力がなくなり、元老院に権力が一極集中。(⇒最終目的よりも実際的な元老院への攻撃が傍目につくことになる)
目的は元老院を倒すこと。なにより元老院最終勧告の非合法性が問題。
非合法性を突くために、法律をできる限り守りながら行動した。
いつ帝政の像はできたか?
実はガリアが帝政創造の第一歩。帝国の国境をはっきりさせておく必要性から。(東はユーフラテス川)
なぜガリア戦役は起きたのか?
直接にはゲルマン人が従来の境界であったドナウ川を越え、ガリア人を押し出し、これによりガリア人がローマ属州を通過し、属州の安全が脅かされる可能性が出てきたため。
ゲルマン人によりガリア人もゲルマン化され、イタリアが脅かされるのを恐れたため。
・ アレシアの戦い
→ 苦境に立たされながら勝利、すばらしい戦後処理
(←カエサルの凄いところ)
ブリタニア侵攻について
ほとんど行き来がなかったところ。防衛線でもなかった。行く必要なし?
好奇心から?
後のローマ拡大をにらんで?
ガリアへの援軍の供給地であったため。
カエサルの悪いところは?
借金、愛人など人間的に問題はあり。
元老院の人間をうまく取り込めなかった。実力は十分あったにせよ、許可なしで自分勝手に動きすぎ。(⇔そもそも民衆派として元老院を潰すのが目的だから、こうした行動で元老院を挑発していた?)
結局性格はすべて一長一短であり、カエサルの場合、短所だったところが時代の流れの中で結局プラスとして作用した。
借金について
あまりに多額の借金をしているため、貸し手側としては、このお金の不良債権化を恐れ、さらに貸さざるを得なくなってしまった。
多額の借金はしたが自分のために使わず、軍事や政略のために使った。
愛人について
元老院議員の3分の2の妻を寝取る。でもトラブルは一切なし。
カエサルを人間的に嫌った人は一人もいない。(⇔俺はスッラが好き!(by石田先生)。「好きと言うと語弊がある。やり方には問題があるが、明確なビジョンと実行力には見るべきところがある」(石田加筆))
虚栄心と野心の大きさとバランス(虚栄心は人によく思われることが目的、野心は自分がやりたいことを達成することが目的)。セルフプロデュースのうまさ。⇔森首相
要は気配り上手!(⇔ハンニバル「強さ」)
・ 副将ラビエヌスについて
カエサルの右腕的存在だったが、ルビコン渡河直前にパトローネスであるポンペイウスの下へ戻る。
当時のパトローネス−クリエンテス関係は親子関係のようなもの。長年会っていなくてもどこかでつながっているし、お互いに守りあうのが道徳的に正しいこと。
戻って当然。ゆえにカエサルも殺さずに返した。
カエサル「自分は自分の信念に基づいて行動する。ほかの人間もそうあって然るべき。」
(文責:千々和 伸浩)