第三回議事録 (11月8日,15日)
ローマ人の物語第III巻
◎社会的背景・・・第二次ポエニ戦役後、社会が変わり、混迷の兆しが見えてくる
・農耕・同盟国家→商業・領土国家への移行によるシステムの経済化・財政改革
・高成長・戦争後にうまみができることにより、経済格差が大きくなる
・貴族(元老院)⇔市民(市民集会)の対立 → 血生臭い争い・国力の浪費
◎当時の権力の動向
☆権力者たちはそれぞれの理想(不安定な凸の頂点)に社会を移行させようとしたが、それ
を維持できるシステム(凹のような安定した受け皿)を確立しようとはしなかった
ティベリウス・センプローニウス・グラックス
護民官として初めて目立った存在
利権(不公平)の是正 → 「農地法」:低取得層を中産階級に持ち上げる
殺害(実働期間7ヶ月) ← 護民官を下に見ていた元老院のあせりによる暴動
ガイウス・センプローニウス・グラックス
ティベリウスの弟として構想を引き継ぐ
福祉改革 → 「小麦法」
財政改革 → 「植民都市法」
殺害(実働期間3年) ← 『元老院最終勧告』によって、国賊として死刑になる
ガイウス・マリウス
平民出のため、元老院と対立
戦争に勝つための人・政治的教養の欠如
結果的に良い改革 … 徴兵制の撤廃
⇒ 戦争から帰ったら無産になっていた人々の支持を獲得
軍制改革
⇒ 失業者吸収・長期用兵が可能になる
(問題点:戦争終結による職業軍人の失業・権力者の私兵化)
同盟者戦役
ローマとローマ連合加盟国との利権の格差により生じた歪みが原因
⇒ ユリウス市民権法により、連合加盟国の市民権取得を全面的に受け入れる
ルキウス・コルネリウス・スッラ
名門貴族の立場より、マリウスの改革に反対
実行力に優れ、オールマイティーな才能を発揮
任期無制限の独裁官となり、少数指導制によるローマ固有の共和政体の再建を図る
⇒ 死後、自然的に崩壊していく
◎ 論点
○法律が度々変わる ← 国の若さ・柔軟性
勢力図の変化によって、平民側有利な法律ができたり貴族側有利な法律ができたりと、振り子が振れるように社会の優位性が真逆に変わる
⇔ 現代のように哲学・倫理が成熟すると、社会を安定・現状維持しようとする
○法・インフラに人名がつく
法の整備やインフラの施工に対しての責任の所在がはっきりし、批評が反射する
⇔ 現代の日本では中心人物不在と責任の不明瞭化で、名付きの法やインフラは難しい
○元老院による立法
非常時・平常時の切り替えが行われなくなり、本来助言機関であるはずの元老院の権力が増大する ← ハンニバル来襲の後遺症
機能が働いているかチェックはしたが、機能自体の正当性を考えなかった事例
○システムについて
プラス面 … 実施者に依らずほどほどの成果が保証される
マイナス面 … 緊急に大きな成果が要る場合に生まれる例外により、システム自体が成立しなくなる
システムは、それが作用する枠の初期条件・境界条件によってもたらされる結果が異なるため、社会の変化に併せて柔軟な調整が必要である
(文責:松尾直樹)