第五回ローマ人の物語を読む集い議事録
正式名称「社会システムとインフラ、および人間学」
6月2日6限
3.勝者の混迷 の後半の会

今回の参加者(時計回り)
藤=藤田 司会
富=富田
池=池田
鈴=鈴木 書記
千=千々和
石=石田先生
稲=稲葉
吉=吉田
#=誰とも無く形成された共通認識、複数者の同一意見

藤 じゃぁ、始めますか。
石 先週の「一芸に秀でるものは多芸に通ず」の・・・(入学式の総長式辞のプリント配布)
藤 同盟者戦役あたりからですかね?
石 前回、前々回の自分の発言には切れ味がね・・・

#前回、どこまでやったのかを皆考える。

藤 同盟者戦役の本質的な話をしよう。ハンニバルが崩そうとして崩せなかったローマ連合が自然発生的に崩れて戦争になってしまった。同盟者戦役で活躍したのはマリウスと・・・?
石 スキピオ=ナシカとかな?
藤 じゃぁ、スッラとマリウスについて一言ずつ・・・ジャンケンして!(→稲葉vs富田)

稲 マリウスは元老院のためにやったけど・・・結局スッラの傘下の(連中)に覆されちゃって・・・。本当に名声あったのかしら?
吉 (マリウスは)復讐とか戦争は上手かったけど、広い目を持ってなかったことが印象に残った。器が無かった。
石 スッラが好き。目指すべきローマの姿とは結局ズレはしたけれど、目標を持った上で物事に対して優先順位がはっきりしていて、ステップをどう踏めばその目標を達成できるかを上手にやれた。終身独裁官になったのに、途中でやめた。それが目標ではなく、手段であったから。
千 以前はスッラは好きじゃなかったけど・・・。2人とも冷酷。でもスッラは優先順位があり、自分を捨てて国のために続けた精神を持っていることに注目。
石 グラックス(兄弟)は目標ばかりで手段である権力に無頓着。カエサルとスッラは明確に目標とともに手段も手に入れた。しかし権力が目標なだけでは結局リーダーに不適格。
鈴 どっちも嫌いだけど、スッラはビジョンが明確だった。
池 はい。スッラに対して思ったこと=石田先生のおっしゃったことで被った。最初は何でこんなにやることが、強いというか強引なんだろうっていう印象を持っていて、武力でローマの政権をとったりして、強引な人に見えた。この国をこうしなければならないというビジョンがあって、はたから見ると強引だけど、スッラのビジョンからは必要なことだったのか。印象的だったのが、公生活と私生活が別だったこと。国の国政を改革するということが柱とはいえ、自分の生活とは別にしてるところが面白い。マリウスは軍事面だけの専門家。それがなければもっと違う生き方が出来たんではないか。
富 作者はスッラが好きなんじゃないか、というような書き方。資質は全て持っていたけど先見性だけは持っていなかった、としているけど、本当にそうか。反対者の虐殺は必要だったのか。元老院の力を取り戻すために逆に独裁官になろうとした発想は大胆だと思う。
藤 公私の別をしっかり、目的と手段の別をしっかり。生き方がロジカル。マリウスは真逆。公私の別もつかない、対照的な2人。

#皆さん同盟者戦役に未練がないようなので。元老院の力を強化する、制度的なところで、スッラの改革はどうだったのか見ていこう。

千 ローマの戦術のところでもあったけど、過去の成功にしがみついて変われない。過去の栄光あるローマに凄く捕らわれていたのか。
石 過去のローマっていうのはこの時代からしてみればどの時代なんだろう?ポエニ戦役あたり?
千 地中海の覇者になったころ?
藤 ポエニ戦役で覇者になって貧富の差が拡大して、グラックス兄弟が登場→混乱→元老院の力を強化しようということでしたね。
鈴 スッラは手段を選ばなかったが故に、達成した目的が後から覆されたように思う。
富 そうでもしないと目的を達成できない状況にローマはあったんでは。
藤 その場しのぎ感があるよね。
吉 急ぎすぎたんじゃ。
池 変えられたけど、一時的なもので、持続的でなかったのが先見性の欠如じゃないかな。
石 周りの状況が、その時代(栄光の時代)とは違うよね。古きよきスタイルが合わない。でもどこに無理があったのかはいまいち(分からない)・・・
吉 元老院の規模とかは一応増やしている。
藤 今の状態に合わせるように、昔の(制度)をいじったら余計合わなかった?頑張って結局駄目になっちゃった、みたいな。
千 (この制度は)本当に駄目だったのか?ポンペイウスとクラッススが暴走した(だけ?)。
富 護民官の力を無くしたのは先見性が無かったからだと思う。
鈴 元老院制を脅かす手段を潰したかったんでは?
藤 グラックス兄弟みたいな。
千 スッラの体制だったら、二極化した国になっていたのでは。
藤 ポンペイウスとクラッススの台頭の理由は。
稲 (クラッススは)あくどい方法で(高利貸し)。
藤 叶姉妹みたいだよね。クラッススは人気が無かった。だからポンペイウスを頼った。
石 大きくなったローマを執政官(と元老院)で薄く広くってのはもう無理があるよね。責任も薄く、ってのは。
藤 それをフォローするために元老院を置いていて、スッラは強化した。
池 スッラにしては、いっぱい人材の在庫がある元老院制を強化した方が寡頭制には向いていると思った?
藤 執政官は一年任期ではスパンが小さい。
石 仕事は増えているのに、(任期一年では)サイズが合わない・・入ってくる情報も多くなってるし。
池 地図見るとすごく広い。
鈴 結局、大きくなった世界を大人数で支配するか少人数で支配するかという観念、方法論で現代でも決着のついてない問題。
藤 ポンペイウスにしか軍事の才能が無かった。
稲 (軍団を指揮するのは)執政官にしかなかったはずの権力だよね。マリウスは政治の才能がなく、ポンペイウスには多少あったので、少し上手くできた。執政官は軍事面の方が重視されているような?(執政官が行うべき)内政とのねじれが。
藤 軍事の権限が執政官とイコールしなくなってくる。インペリウム(が執政官から独立した)。

藤 治める領土が広くなってきたけど、執政官はそのままで、元老院は巨大化した。
石 ポンペイウスも若くして、29歳で例外を認めさせたのは・・
#彼しか居なかったから、プロプラエトルで・・・あ、例外になってない?
稲 29歳のポンペイウスはプロプラエトルとしてインペリウムをもらった。
#プラエトルには年齢制限があったけど法の網をくぐりぬけた。

石 原則が通じない特例が頻発しちゃうとルールはあってないようなもの。
藤 とりあえず法に反するわけではない。
稲 この前例としては、スキピオ・アフリカヌスがあったから。
石 無理矢理なこじつけか。システムが実力と関係しないということでは、突発的なことに対処できず、特例(を認める必要)が出てくる。
稲 (以前は)独裁官を利用していた。任命さえすればなれる役職。スッラは独裁官になった。
石 当初は執政官が行く(行軍)のにプラエトルが付いていった。(役職としては)リーダーの補助に付いていった?
吉 (ポエニ戦役以降)法務官としての仕事ではなく、軍団長的な仕事にかわっていっている。
石 ちょっと無理があるよね。
吉 多局面の対処のためにたくさん出していたけど、この時代にも必要があったのか?執政官の下に置くくらいで良かったのでは?
藤 (ポンペイウスを登用したのは)他に居なかったから。2倍の定員が居ても元老院の誰もがポンペイウス1人にすら勝てない。これは確率の問題なのか?
石 台頭してきた層を取り込むことが出来ないとね。
鈴 ポンペイウスは平民出身?
吉 名前が三部構成で、地方貴族(有力者)らしい。
鈴 地方出身者の台頭であるポンペイウスを体制に組み込めたのはある意味でスッラの理論に合致する。
千 有力者が(スッラとマリウスの)粛清で居なくなっている。
藤 マリウスとスッラのせいだ!
池 民衆派が居なくなって平和になるとスッラは思っていて、平常時はそこそこの人材で良いと思ったんだけど、結局戦時にいい人が居なくて例外を生むことになった。
藤 (改革を)急ぎすぎて、(反対者を)殺して内側に取り込めずに例外が増えた。
稲 革命とかが起きるときは、その中に居なかった人が台頭してくる。江戸時代からの変化も市民階級の台頭が・・・。スッラは自分一人の中で完結しちゃっていた。継続させるということを考えてなかったのが問題。
藤 (システムと言う)入れ物しか考えていない。
池 皮袋をつくろった、っていう表現があった。
藤 (システムが)非ローマ的なやり方だよね。
千 スッラのやり方があとワン世代続けば定着したように思うけど、スッラが後継を育てていなかったことで、上手く行かなかった。カエサルがオクタヴィアヌスを指名したのとは違って、スッラはそこが抜けていた。
池 (スッラは)システムが勝手に動き続けると考えた。システムを上手くマネジメントする脳が居なかった。
吉 システム信仰的なところがある。
石 そもそもどういう理由でこのシステムを創ったのかということをちゃんと言わないと、(システム自体が)伝わらない。後世が変えてしまったものが実はシステムの根幹の部分であった、なんてことも。
富 スッラの作ったシステムは今までのローマとは違う。新しい人が台頭してくるには、スッラのシステムでは流動性が足りない。今までは開放的であったのに。市民権の取り上げなど厳しい措置がある。作ったシステムにも問題があった。年齢制限など。
藤 年齢制限が問題有り。何のための年齢制限?
石 (寡頭制に)秩序をもたらす。凡人にもキャリアパス。経験重視。
藤 年齢制限は大事なのか。元老院体制にはなんの効果を?
池 普通の人は、経験がないと育てられない(人材として)。
藤 システムの中に経験を得られるように組み込んだ。
稲 官僚制みたいだよね。
石 凡人には(ポンペイウスなどみたいなことは)無理です。
稲 スッラはこのシステムがあれば、凡人でもきっちりいくようにしていたけど、それは既に時代遅れだった。
吉 このシステムでは逆にポンペイウスのような人、個人の台頭を阻止していた。昔からシステム自体はあったけど、それなりに柔軟でやってきた。スッラはがちがち。
池 ガチガチだからそれ故に、ガチガチがのちのちに崩れた。
藤 元老院が少人数だった時代とは違って、大人数だと難しい。例えばこのセミナー(※この日は8名!)の日程を「都合つかないんで」でズラすのは出来なくはないけど、これが100人居たらまず無理ですよね。
池 ローマ連合自体の規模が大きいから、システムが必要。だけど大きい分例外が出てくる。でも例外を認めると他に示しがつかない。
藤 ポンペイウスが(制度を)崩したのは、例外を認めたから。例えば官僚とか役人は例外にやたらうるさい。認めちゃうと崩れちゃう。昼近くに情報公開棟に行ったらタッチの差で閉まった。1分か2分くらいいいのに、と思っちゃうけど。
石 お役所仕事は絶対に例外を認めない。例外が出ると次々に認めなくてはならなくなる。
#なんだか帰納法の話題ですね。

藤 例えばどうやったら赤字国債を解消できるか→「生活保証を無くせばいける」→「でもそれじゃあんまりだ」→「6万円ならいいの?5万円は?4万円は?・・・」→(帰納的に)結局ゼロに。
鈴 大人数(元老院)で統治するのと、少人数(皇帝)で統治するの、結局その人数の差に意味が?(帰納的に)差が?
石 国会の人数はどうなっているんだろう?決め方とか。
#国会などの人数の決め方の話題です。帝国議会→日本国憲法→国会という順番でしょう。
#でも皆工学部所属なのでもうそんな知識は遠い彼方です。勉強って大事ですね。


吉 元老院を600人に倍増したけど、この人数は有力家門の合計で出た数字?
#やっぱり国会定員の話題に。500人と501人、何が違うのか。誰がどうやって決めたのか・・・。

池 統治範囲が広がった分=増加分?
石 いっそ会議場の大きさとかで決めたんじゃないの?
#600人も居ると、元老院もしんどいよね・・・。

池 多くは騎士階級で、貴族と半々くらいになるようにバランスした。
こう考えていくと、定員が50なのも理由分からないよね。>社会基盤学科
#実際は50以上取ってますよね。
#実は、生徒数に応じて先生の数が決まって、それによって予算がついたり、ポストの数が決まったりするようです。だから学生の確保に各学科必死なんですね。
#進振りの話題。社基は頑張ってたけど、お隣さんはほっといても人が来ますよね。

稲 ローマ市民権者が10倍になったら、元老院も10倍にして更にひとつ上にまた機関を作ればよかったんじゃ・・・
吉 欠員はどうしていたんだろう?
藤 有資格者はいっぱい居たんでは?
吉 300→600に倍増するときの300人は(その有資格者だけでは)きっつい。
藤 地方の人と騎士階級を入れたのか。
稲 貴族は元々自由に入れたの?
#スッラは役職経験制にした→少なくともスッラの改革時には役職経験しないと元老院には入れない。

藤 キャリアパスの入り口(レガートゥスなど)→クワエストル→元老院というプロセスか。
吉 クワエストルはいっぱい居た。
鈴 クワエストルは再選できたっけ?クワエストル経験して、欠員が居なかったらその人はモラトリアム?元老院議員でないとなれない役職があるのに・・・

#そろそろ時間が来ましたね。
藤 ポンペイウスを今のうちにやっちゃいましょうか?次回以降も扱いが脇だし。
石 あんまり興味・・・ない
藤 この後もカエサル以外興味が・・・
稲 クラッススなんて特に・・・
千 悪代官って感じ。
池 火事のときの火事場泥棒的なエピソードとかヒドイよね・・
鈴 カエサルに金を貸してるあたり意外とクラッススは面白かったんじゃ?
稲 クラッススはボンボンっぽい。
#皆ひどいよね・・・
鈴 ポンペイウスは軍事以外に何かやったの?キケロとの仲は良かったっけ?
藤 ルクルスの美食が気になる。キケロとポンペイウスで食べに行ったエピソード。ルクルス自体はうだつの上がらないやつ?対ミトリダデスのときにポンペイウスに替えられた。代わって、ポンペイウスは与えられたインペリウムを持ち続けた。
石 ポンペイウスにキケロは賛成をしている。なんかこの時代って長生きだよね。イタ飯は(健康に)いいんじゃ・・・。
鈴 肉食じゃないですしね。
池 午後は競技場で運動っていうし。ブルジョワ!
吉 (ルクルスの一食は)年収の10倍・・。現代の日本人の平均年収は・・・300万くらい?
#じゃぁ一食3000万円ですね。
石 それは無理だわ。
鈴 きっと時代的に、運賃が・・・。
藤 お金はどっから・・
#貴族だったこと。戦利品から。美術品から。国庫から。

そして一応のまとめ
 スッラ体制(の制度)はまぁ面白い。元老院の数を倍にするとか、キャリアパスを確立するなど、ガチガチに制度を固めて、でも人を育てなかった。キャリアの入り口に人を誘導できなかったことが失敗。子飼いであるのにポンペイウスをそのパスに入れられなかった。
 スッラ=フェリックス(幸運)と名乗る彼の人柄はある意味で謙虚な彼の生き方。


次回、ユリウス=カエサル~ルビコン以前~の第一回目は
司会 池田
書記 吉田
です。頑張ってください!

文責:鈴木豪

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