少人数セミナー「社会システムとインフラ、および人間学」第一回議事録
司会 鈴木豪
記録 藤田哲朗
○第一巻を読んだ第一印象
池田:戦いをして勝った敵をローマの市民として受け入れているところが面白い。
パトローネスとクリエンテスの関係が興味深い。
社会システムは変遷しているが、その中にも一貫するものがある。
生臭くないっていうか。普段は平民と貴族が絶えず政争を行っているが、外敵が現れると協力して対決しているところとか。
谷道:切り替えがはやいってこと?
石田:ドロドロしてない?
池田:そうそう。
和田:池田さんに同感。普通は倒した敵を奴隷にする。ローマ人はそうはせず、市民権を与えて受け入れているところに柔軟性がある。なんでそういう風に柔軟にいられたのか?
王が世襲でないところが面白い。終身なだけで、優秀な人が選ばれていく。
谷道:やっぱりドロドロしてない。
石田:世襲でないのって、帝政と何が違うの?帝政にも元老院はあるし。
鈴木:王政は選ばれてからなるんじゃないですか。
死んでから次が選ばれる。市民集会の承認が必要。
千々和:帝政は指名権がある。
稲葉:柔軟な国民性。開放性。貴族の高貴なる義務。地位を持っている人はそれなりの義務をもつ、という考え方。権利の裏側には義務があるということがしっかりしている。
千々和:吸収力。違うものを受け入れる度量。そういう点ではアメリカに似ている。でもアメリカよりもローマの方が度量がある。例えばアメリカだと大統領は黒人ではなれないが、ローマでは同化した他民族も王になれた。その度量の広さの原因はなんだったんだろう?ローマだけがそれを持ちえた理由は?
富田:みんなと同じで開放性。他には、軍事力。ほぼ常に戦争に行くのに、市民に不満が出ないのが不思議。
谷道:自分たちのプラスを考えて行動する。特に戦争(と戦後処理)。プラスは最大限プラスに、マイナスは最小限のマイナスに。他民族にも市民権を与えている。
市民権に対する考え方の違い。ギリシャだと、ソクラテスはアテネ人だから悪法で死に、アリストテレスはアテネ人ではないから法を破って逃げた。
藤森:元老院っていう制度がすごい。貴族でなくても護民官になれば元老院に入れない。現代ではできないと思う。「我は美を愛する〜(2巻p.18真ん中)」というのがとてもとてもかっこいい。
吉田:同化政策がステキ。都市建設に民族性が現れるというのがとても感動した。サビーニ族の女を奪うところ。一神教と多神教の違いなど、宗教の違いで分析しているのが面白かった。あと、スパルタが鉄貨のみを流通させたところ。これはマイナスに発展させている。
公共施設はローマの行政が、それ以外の施設を民間にまかせた結果スプロールになったというのが現代に通じる。「ひとまずの結び」が面白い。フランス革命や宗教に侵されているとか。
鈴木:成功したものを後で追っかけている。後世に生きている自分が学び取らないといけない。制度とか法律に興味をもった。柔軟なところは柔軟だけど、芯はある。裏切りにはすごく厳しい。
藤田:3つの政体。君主政と寡頭政と民主政。うまく組み合わせている。民主制だと動きが遅い。ここぞという即決力が必要なときは君主制に切り替える判断力。
石田:システムを作り出したのは国民。政体には国民性が浮ぶ。逆に、システムが国民を動かすともいえる。システムはとても重要。鉄の硬貨、護民官の元老院入りなど。
市民議会と独裁官など、全然違うものが一つの制度の中に入っている。クリエンテスとパトローネスの関係は一見閉鎖的だけど、閉鎖的なものが集まって開放的になっている。
○ギリシャとローマの違い
・ローマの不可解な部分
藤森:市民権を二重に与える。これはどうなんだろう。
鈴木:他の国では現在もある。日本にはないけど。
吉田:今ほど国家間が複雑ではないからじゃない?
・ギリシャの駄目なところ
鈴木:協調性はない。現代の日本も「あー」って。
谷道:同盟を結んでいるときでも普通に戦争してる。
石田:今でもそうなのかな。(以下雑談。略)
稲葉:拡大思考がない。ローマが拡大する理由がわからなかったのでは。
ギリシャには自分の領土さえ守れればよかった。
古田:ローマはアテネの法制度を見たけどマネをしていない。弱点をみたのでは?
「外観は民主政だが実情は〜」という文。
谷道:ちゃんと優れた人物が続くのかは問題。
和田:(ギリシャの政治は)「人」でもってる。
池田:アテネの政体の変動性。システムが落ち着かない。ローマの方は安定してる。
稲葉:哲学に求めたから?
鈴木:勉強しすぎ?
石田:民主主義が行き過ぎるとうまくいかない。
鈴木:現代の日本に通じるところがある。
石田:日本でも首相がころころかわっているね。
藤森:そういう意味ではローマでは任期一年。どうしてやっていけたのかな。
鈴木:元老院があったからじゃない。
富田:日本には官僚制がある。
石田:元老院も官僚も誰でもなれる(ところが似ている)。誰でもなれるのは大きい。
石田:(ギリシャ人が民主政の理想を追っていたことに対して)ローマは机上の空論に拘っていない。
池田:(平民が求めた結果生まれた)執政官を選ぶとき、結局選挙の結果貴族がなった。
貴族と平民の関係が面白い。
千々和:ローマは名誉を重んじる。それが差を生んだのでは。
鈴木:クリエンテスとパトローネスは現代の政治家と支持母体の関係に似ている。
藤森:日本のそれよりずっと有機的。
鈴木:家族みたいなもの?
池田:(昔の日本の)主従関係に似てる。
鈴木:(ローマの方が)ハートウォーミングな感じ。
藤森:カエサルとポンペイウス・ラビエーヌスの関係は特徴的。
谷道:どうやってこの関係ができたか書いていない。
石田:卒論で調べたら?笑
藤森:この関係は日本では無理。(クリエンテスを養うための)経済力の問題もあるし。
石田:当時は食い扶持と安全保障が凄く大事。
池田:パトローネスは意欲的にクリエンテスを集めてた。
鈴木:相互依存。
石田:これはギリシャの貴族と平民との関係とは違う。
池田:解放奴隷も市民になれるのがすごい。
鈴木:クリエンテスにしたくて開放するとか。
開放の条件(お金)。時給とかって制度はないだろうし。日給とか月給とか、年給とか?
吉田:パトローネスのためにクリエンテスがお金を集める場合もある。
藤森:奴隷もお金をためられるんですか。
石田:奴隷は市民権がないだけ。僕らの思うような奴隷とは違う。主人の子供の家庭教師やったりするし。
鈴木:ローマは私有財産を重視している。奴隷にも財産所有を認めていたのでは。
藤森;市民権を持たない奴隷なのに私有財産を保障されるんですか?
鈴木:完全には保証されてないけど、名誉とか礼儀の範囲で保障されているのでは。
富田:すごい不思議。駒場の授業で聞いたけど、昔(キリスト教の時代)は私有財産の所有を認めていなかった。財産を持つと上の人を敬わなくなりそうな気がする。でもローマの奴隷は財産を持っているのにつながりがあった。
石田:2巻101p。マキャベリの発言。ものすごく核心をついている。
藤森:必要に迫られたら、というのが大事。
石田:マニュアルを作るのはすごく大変。構造物の設計でも大変。政治ならもっと大変。
千々和:守るべきものがはっきりしている。みんなそれを把握している。
和田:今の世の中じゃ無理。
石田:役人は仕組みだけを守ろうとしがち。
藤森:戦争はすごく柔軟じゃないと勝てない。
吉田:執政官が司令官をかねているのがすごい。普通出来ない。首相が前線に立つのは普通考えられない。
石田:万が一のことがあった場合のバックアップがしっかりしている。安全弁ができてる。
それでもローマは没落していく。
鈴木:教育が徹底されていないのに、意思統一が図れている。なんで?
千々和:共同体の中で道徳教育がしっかりあったのでは?
池田:パトローネスとクリエンテスの関係がそれを果たしていた?
吉田:貴族と平民の結婚が許されたのも大きい。貴族であることが教育を果たしていた。
鈴木:全員がなんらかのクリエンテスとパトローネスに所属していたのでは?
千々和:日本の今と正反対。コミュニティが解体している。
石田:だったら、何か違うもので補わないといけない。(道徳教育などを)どこかでやらないと。
鈴木:コミュニティは作ろうと思っていてもできない。
吉田:剣道b(以下オフレコ)
吉田:市民から奴隷なってしまうことはあるの?
鈴木:借金のカタに奴隷になることはある。禁止されたけど。
藤森:ギリシャの話じゃないの?ローマでも?
吉田:ローマでもあった。
鈴木:人口の割合はどうだったの?
(以下、プロレターリの話。プロレターリの定義は?など。本に書いてあるので略。あとは鈴木の預金の話とか。)
石田:当時のローマの総人口を知ることは出来ないって書いてある。
谷道:奴隷はそんなに多そうではない。◇みたいな?(◇←これは人口ピラミッドの表現ヒエラルキーの底辺である(と思われる)奴隷は少ないのでは、ということ。)
不明な点。みんなで読み返そう!
・ 人口比率はどうなっていたのか。
・ 奴隷をどのように補充するのか→奴隷は世襲?
・ ギリシャの弱点(みんなよく覚えてないようなので)
○まとめ的なもの
吉田:訳語でイメージ固めている。訳語に引っ張られているのでは?e.g.)奴隷
石田:今日の一つの共通認識は「言葉のイメージに引っ張られるな」だね。
共和党と民主党とのアナロジー面白い。
関係資料もってくるといい。
(この後、藤森のしおりで盛り上がる)
○次回
IIは3巻まとめて読んでくる。がんばれ!
お疲れ様でした。
文責:藤田哲朗