少人数セミナーレポート


ローマ人の物語を読んで

土木工学科 30029 咲村隆人



 少人数セミナーで主に話し合った「リーダー」「インフラ整備」について書くことにする。

 「ローマ人の物語」を読む限りカエサルは立派なリーダーであるようにみえる。人物を適材適所で配し、また人心掌握にも優れるとともに、権威を失い既得権益の確保ばかりに熱をあげる元老院に代わり、適切な政策を適切な時期に打ち出し、国家の発展に大きく貢献するとともに、国民の人気も高かった。現代日本にも彼のようなリーダーがいるとうれしい。
 しかしながら、王制、共和制、帝政であったローマとは異なり、日本は民主主義国家である。カエサルのように独裁気味の政治体制であれば、次々と政策を打ち出し成果をどんどんあげていくことも可能だろうが、民主主義体制においては反対勢力のある程度の協力がなければどうしても政策を進めることができず、思ったことがすべて実現できるとは限らない。独裁の方がよいようにみえるが、独裁はカエサルのような良い君主がいる間は政策が次々実施され国民は良い生活ができるが、暴君が現れると暗黒生活に陥るという重大な弱点がある。
 したがって、民主主義体制下でうまく成果をあげるリーダーのありかたを考えなければならない。民主主義の下では上に書いたようにそれほど急激な改革を期待することはできない。そこで、先見の明をもち長期的視野に立った政策を考え出す能力が必要だろう。現状に問題がはっきり現れてからでは遅い。さらに、長期的な政策の必要性にまだ気づいていない人たちの協力を得なければ政策を実行に移せないことから人心掌握も必要になってくる。悪くいえばだますことになるが、うまく説明して味方になってもらうことが重要だ。政治の世界のリーダーだけでなく、企業や単なるグループでもそれぞれに必要とされる時間スパンに応じた先見の明や人心掌握が重要なリーダーの資質になるだろう。
 インフラ整備は取りかかってから完成まで長い時間がかかる。これはほかの政策と同様であるし、インフラ整備自体が様々な政策の一環であることからも自明である。日本は戦後、経済成長を裏で支えているインフラを急速に整備してきた。しかし、最近はインフラ整備に対する風当たりが非常に強くなってきている。ローマは鉄道の開発まで十分に第一線で1500年以上活躍できるインフラを整備していた。本を読む限り特にローマ国民の間に反対の声があがったということはない。
 ローマと日本のこの違いは何なのかと考えるに最大の要因は人心掌握であろう。カエサルをはじめとするインフラ整備に力を注いだローマのリーダーは、国民からほかの政策同様インフラ整備にも支持を得ていた。国民の心をつかむ努力をしていたおかげであろう。
 日本でも、インフラ整備の目的や計画経緯、効果をはっきり説明したり、失業対策のために整備することもあるとあるとはっきりと説明してはどうだろうか。何かとうやむやにきまり、実行されているように国民に思えるから、無駄だとかゼネコン救済のためだ、と非難されるのだ。
 政治家は先見の明をもち何らかの理想があったからこそ政治家に立候補したのであろうからリーダーに必要な資質を最低一つは備えているといえよう。あとはうまく説明して国民の支持を得ることがだいじである。自分の支持者に説明するのは得意なようであるが、そうでない人に納得してもらう技術をもつことが重要だろう。長い混迷の時代からようやく抜け出せそうな日本にそのようなリーダーが現れてほしいものだ。かなりの努力が必要だろうが私もそのようなリーダーになれるものならなりたい。

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