2002/01/31提出締め切り


少人数セミナー
 最終レポート



土木工学科 3年 20008 松尾直樹



 このセミナーを終えて考えたことを書き連ねる。

〇社会基盤について
 ローマ人は公を重んじることで基盤を充実させた。思うに、基盤の効果的な充実は公を重んじる社会でしか為されない。
 社会において公より私を重んじられるようになると、誰もが富を得ようとするために発展の速度が著しく高まる。しかし、その発展にも収束する時が来る。そのときに、発展によって大きくなった国と築いた基盤とのバランスが崩れていると、安定成長に移行することは難しく、混迷に陥る。
 日本は高度経済成長で著しい発展を遂げた。戦後の敗戦国という立場から先進国まで上り詰めた。高度成長期においては目先のことばかり考えて行われたような開発が多く見られる。社会基盤には国民性が映し出される。ここでわかる国民性は,長い目で見る能力に欠けていて、なにかと結果を急ぐ傾向がある、ということである。
 資源の少ない日本が生き残るには基盤の充実を図る必要がある。よく整備された基盤は効率を生む。それによって生み出される時間などの便益は目に見えるものではないが、充分に支出を満たすものである。
 社会基盤は国民性によって育てられ、また国民性は社会基盤によって変容する。日本は一度、社会基盤をしっかりさせることに専念するべきなのかもしれない。

〇リーダーについて
 リーダーにも様々なタイプがある。「ローマ人の物語」における、すべてのことが一人でできる人―ハンニバルと、人をうまく使う人―スキピオの比較で見られるように。
 リーダーも適材適所である。社会の必要に応じたリーダーによって充実した発展が得られる。
 今の日本で求められるのは、国民のまとまりを作るリーダーである。戦時中の日本を見ればわかるように、一丸となったときの日本人の力は強大である。現在内在している問題の重大さを国民に認識させ、問題の解決の方向性を明らかに示すことが必要だろう。
 このためには一貫した政策による長期的な解決を要するのだが、首相の任期は最長で4年、内閣総辞職や衆議院解散によってさらに短くなるのが現状である。閣僚の交代による政策の転換や人気取りための公約を防ぐためにも、緊急事態の対策として内閣の任期を調節できる制度を設けることが有効ではないだろうか。
 多党政治にも問題が出てきている。議論を競い合うことは重要であるが、現状を見る限りでは、互いに潰し合うことしか考えてないように見うけられる。個人的な利益の誘導を本当に国のことを考えて、着実に政策を進めていけば社会は示した方向へ進むはずである。
 公と私はバランス良く考えるべきであり、私は公の上に成り立っていることを忘れてはならない。
〇システムについて
 日本は小手先の手段ばかり用いていても、今の状態から脱却することはできないだろう。目先のことしか考えずに部分的な変革を行うことは、いずれシステムに歪みを生じさせる。システムには一貫性が不可欠であり、全ての要素に共通する何らかの信念が無ければ安定しない。安定を得るためにも、根本的に大きく変えることを考えなければならない時期なのではないだろうか。
 例えば、資本主義は大雑把に見ると、私を重んじる制度である。これが適用されて長期にわたって効果的に機能するのは、すでに社会基盤が成熟している社会においてのみではないだろうか。社会が発達していくのには段階が必要である。日本の資本主義は必要性から始まっていない。戦後の、しかも敗戦国という立場から脱却することだけを考えていた日本には、資本主義は向いていなかったのかもしれない。
 全ての物事はそれのみで存在するのでなく、他の様々なものと常に関連して活きているのである。それが効率的に為される総括的なシステムによってこそ、充実した社会が築かれる。
 システムは、それが作用する枠の初期条件・境界条件によってもたらされる結果が異なる。つまり、「システム」「初期条件」「境界条件」が与えられれば、結果は決まっているのかもしれない。実際には考慮する要素が多様過ぎて、完全に正しい解を出すことは不可能ではあるが。
 科学や学問は常に発達してきた。私は、それらは未来を予測するために在るツールだと考える。人間が無常であるため、社会が無常であるのは必然である。予測が結果に少しでも近づくために発展を繰り返す。


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