2002/01/31提出締め切り


少人数セミナーレポート



土木工学科 3年 20026 福島 秀哉



1) 今回のセミナーを通じての感想
今回の少人数セミナーはローマ人の物語を題材にしながらも、非常に幅広い話(雑談?笑)ができ非常に楽しかったというのが一番の感想です。最初は本の内容について事細かに話していくマニアックな話が続くのかなと思って躊躇していたのですが。メンバーが楽しく、またよく考えている人が多かったこともよかったと思います。今回のレポートではこのセミナーを通して浮かんできた考えについて話したいと思います。

2) 今回のセミナーを通して考えたこと
最近考えていることは、セミナー中もよく口にしていた考えだが、あるシステムを考えて立案した際にその案をいかにして実際の社会に具現化していけばよいかということである。
古代ローマの混迷期と今の日本はある意味似たような状況にあるという話がセミナー中にもよくでてきた。古代ローマがその混迷期からカエサルという天才と帝政という新しい体制によって持ち直していったように、今の日本にも何か抜本的な解決策がほしいと願ってしまうのは今の日本社会にすんでいる人たちなら誰でもが持つ考えであろう。そのために政治家は改革路線を売りにして人気を稼ぎ、その解決策の実現性のなさ、具現化の困難さに国民が気づくとともに人気を失う。そんな社会において大学の教授や他の学識経験者と呼ばれる人々は新しいシステムの導入や、現状システムの改良など社会の仕組みを変えるような提案をし、研究を進めている。そのような話をテレビ、または直接聞く機会が何回かあった。そんな中で考えたことは、システムの発案やプレゼン時の論理整合性などには十分な配慮があり、実現性が高いといわれる発案ができているが、それは本当に社会に受け入れられるものなのだろうかということである。
 世の中には博識な人々ばかりではなく自分の生活やその周りの事しか考えないで生きている人々もたくさんいる。そのことはあたりまえのことであり、世界中の人々に対して国や世界全体のことを考えて生きろということ自体に無理がある。しかし新しい社会について語る人々には自分と同じレベルの公共性や道徳心を持っていない人々に対して、「彼らがもっと社会全体のことを考えてくれたのなら、私の発案したシステム、政策はもっと上手くいったのに…。」とでもいいそうな人が多くいるように思う。つまり自分の発案したシステムが、最後の最後に一番力をいれむしろそれによって妥協点などからシステムの変更さえありうる、「実社会への具現化」の部分で社会の一般の人に投げ出されているのではないかということだ。
 実社会を変えようと思って発案したシステムや政策なら、実社会に変化を効率的にもたらしてこそ、評価のしようもあるのであって、それもかなわないのならもともとの前提となる社会における境界条件が違っていたということである。そのシステムを考えた人は、そのシステムが実際に社会に導入されたときにどのような変化が起こるのか、という最もボトムの部分を視野に入れて考える義務があると思う。社会の全体について考えていない人に対して、それをどうやってうまく誘導していくか、またはそのようなモチベーションを生んでいくかということに力を注ぐべきである。
 ローマ人の物語に出てくるカエサルは常に国全体のことを考えながらも、そのために実際に会う一人一人の人間にどう接していけばよいか、地方によって民族性が違うためにそれぞれをどう統治していけば目指す国の形態がうまく機能するのかなど、実際に社会に接している部分にも十分な配慮と考えを持って行動していた。
 日本という国がこれから変わっていく必要があるという考えは、モノを考えている人たちだけではなくマスコミによって一般の人たちにも共有されている漠然とした考えである。しかし社会は古代のローマとは比べ物にならないほど複雑になっていて、いくらカエサルであっても今に日本のトップからボトムまですべてを考慮いれて改革を具現化していくことは不可能であると思う。よって今の日本を変えていくのに本当に必要な「変化」とはシステムと実社会の接点部分に与えられるべきであり、その原動力なくして日本の改革はないだろう。
 好き勝手なことを書いてきたが、今回のセミナーをとおしてこのようなことを考えるに至った。まだ具体的な案や考えはないがこのように考えたことを残しておきたいと思っていたのでレポートの題材となってよかったと思う。
 
先頭で進路を決める執政官がいるように、見えないところでその執政官が見きれなかった一兵の言動や挙動を全体の方向にあわせていくように試行錯誤する百人隊長などの部下がいる。時にはごまかしたり、簡単な喩えを出して納得させたりする。説得に時間がかかることもあるだろう。そんな百人隊長がいて軍は上手く回るのではないか。
 システムや政策を考える全員が自分を執政官だと考えているうちは、一番ケツを歩いている兵の気持ちや行動などわかるわけもなく、そんな軍はフットワークが悪く、行軍が遅いため気づいたときには敵兵に囲まれ、最悪分断され、全滅してしまう。
ローマ人の物語でローマが快勝するとき敵側の様子で出てきた場面である。

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